本人や周りにどう伝えるか
  〜軽度発達障害 受容 告知の問題〜

 LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動症候群)、高機能自閉症、アスペルガー症候群などの軽度発達障害を持つ子どもについて、本人や周りにその障害をどのようなタイミングでどう伝えるかというのは、保護者の大きな悩みの一つです。
 学校に配慮していただくために、障害名や状態像を伝えるのは多くの方がやっていることですが、一方本人や周りへの公開(カミングアウト)の時期や方法を慎重に検討される方も多々います。
カミングアウト(公開)をするのが善、しないのが悪とは一言では言い切れず、その親子の置かれている環境、状況によってそれぞれが判断した方法を納得の上で行うことが大切なようです。
誰かにとってうまくいったことが自分のケースに当てはまるとも限らず、迷いもつきませんが、いくつかの考え方をご参考までにご紹介します。

カミングアウト積極派
軽度の発達障害は周りから見えにくく、世間にもよく理解されておらずいじめや誤解の対象になりやすいので、学校を含め、周りの保護者にも積極的に診断名など公開して理解してもらうことを心がけている。
 周りに子どもに対する共通理解を求め対応の仕方をお願いする時、「**は、こういった時にこういう風になりやすいので、こんな風に対応してほしい」と障害名を伏せる言い方は、「そんな子はどこでもいっぱいいる。そんなこと一人一人にできるわけない」と言われがちなので、「**は○○病院で□□という診断を受けている。□□はこういう状態になりやすく、**はこういう時にこんな風になることが多いようなので、こんな風に対応してください」と言う方が理解してもらいやすいと思っている。
ぼかさないで、診断名と子どもの実際の状況、対応の仕方をきちんと伝えようと心がけている。

など・・・。
カミングアウト慎重派
障害名は、子どものプライバシーの一部でもあるので、本人の承諾なしにカミングアウトはできない。
 周りにカミングアウトすることで、親や医師からではなく、友達などから障害名を告げられたら子ども自身がとても傷つくと思われるので慎重に考えている。
 親として子どもの状態や診断名を受け入れていても、周囲にカミングアウトするという事は、本人に障害名を告げる事と同じ。子ども自身が 自分の苦手な部分も含めて、自分自身を肯定できる時期になったら説明したい。
障害名を誰かれなく触れ回ることは保護者の方が皆善意であるとは限らないので、障害名(診断名)が一人歩きして誤解を生む可能性もあるので慎重に考えている。
 周りへのカミングアウト後、軽度発達障害児の場合は、その影響と向き合うのは子ども自身であり、親が良かれと思ってカミングアウトしても、それが周りからの距離感を生んだり、その辺りの判断がむつかしいので本人の納得の上でカミングアウトしたい。
など・・・。
 積極派も慎重派も、それぞれ自分の子どもに最善の道を探っていることに変わりありません。
どのようなタイミング、どのような方法で周りや本人に知らせていくか、
よく聞かれるのは下記の3点が多いようです。
どういうタイミングでどのように?
  不特定多数に障害名を告げるのではなく、信頼できる人、理解できそうな相手を見極めて、そこから理解や受容を広げていくよう心がける。
 状況によっては、診断名を出した方がわかりやすい場合と、診断名よりも状態像(「人とコミュニケーションが取りづらい子」、「状況判断ができにくい子」)という言葉で表現し、具体的な接し方や手立ての方を伝えた方が良い場合の二通りある。
 障害名は、子どものプライバシーの一部でもあるので、障害名を言う時には、「相手の人が障害名まで知る必要があるか」を考え、また障害名まで言うべきでないと判断した場合、子どもの状態と対応の仕方をお話する。
自分の苦手なことも含めて、自分をまるごと肯定的に受け入れられるようになったら、本人に話す。
以上を参考に、それぞれのご家庭で、一番いい方法が見つかるといいですね。(^-^)

梅永雄二先生(宇都宮大学教育学部教授)より、本人へのカミングアウトについて、
ひと言コメントをいただきました

 アスペルガー症候群の少年が書いた本「ぼくのアスペルガー症候群」(東京書籍)の中で、著者のケネス・ホール君が14ページ、15ページに次のようなことを書いています。

「8歳の時、僕のアスペルガー症候群のことが分かって、そのあと、僕の生活はすっかり変わった。それまでは毎日がつらくてたまらなかった。いつも落ち込んでいた。人生が憂鬱だった。 
 〜アスペルガーだと教えてもらったとき、僕はとても嬉しかった。
 〜 お陰でちょっと気が楽になった。 
 〜 僕は前よりずっと幸せだ。」と。

 日本でも、私が関わったALAAHFA(アスペルガー、LD、ADHD、高機能自閉症の本人(成人のみ)の会)でよく聞いたのは、自分が診断されたあと今まで周りのみんなと違っていたことが障害のせいだとわかり、ホッとしたという気持ちを持ったという話です。
 
 伝え方、伝える時期についてはそれぞれ家庭環境により個別でしょうが、自分の障害がわかるということはその後の人生にとって大きな変化を与えるということは事実のようです。



2003年9月14日自閉症カンファレンス分科会(於:早稲田大学)にて

よこはま発達クリニック
吉田友子先生

「支援としての診断告知」
のお話がありました。

いくつか印象に残ったポイントをまとめてみました。

by:HP管理人


診断名を本人に伝えることがなぜ大事なのか?
     ↓
★高学年以上の子どもは、本人に説明しないと超えられない壁がある。

★安定している時でないと、本人に診断名は伝えられない。
(学校で立ち行かなくなっている時の説得のために告知はしない。問題を乗り越えて安定したところで告知をする。)

★自分に迷いや気づきが出ている時期に告知する。

★親自身がアスペを否定的に思っているうちにいくら親が「アスペを恥ずかしく思うことはない」と本人に告知しても伝わらないので、まず親自身が肯定的にとらえられないうちは親から告知しない。

★診断名がつくことは恥ずかしいことではないが、誰彼なく伝えることはしない。
本人の承諾を得て、兄弟、担任あたりにまず伝える。(同級生には伝えない場合も多い。)






“本人への診断名告知について”よこはま発達クリニック吉田 友子先生から
当ページ宛にコメントをいただきました。


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私としては本人に診断名を伝える上では、その目的が最も重要だと考えています。
診断名の告知は、何かをあきらめさせたり、大人の言うことに従わせたりするためでなく、
子どもたち自身に誇りと希望をもたせるために支援として行われるべきものである
と言う点を
強調したいと思っています。

自分自身のまとめとしては少し古いものになりますが、
「高機能自閉症・アスペルガー症候群入門」(中央法規、2002年)
61ページ〜74ページに(告知の)目的や手順について書かせていただいております。
ご参考になれば幸いです。

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よこはま発達クリニック 吉田友子先生より




吉田友子先生、ありがとうございました。






栃木県学習障害児親の会
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